【プレスリリース】日本を代表する全固体電池の研究者である甲南大・町田教授と共同研究を開始

3DCは、2024年4月、全固体電池の研究において日本有数の実績を持ち、世界的な全固体電池関連企業と多くの共同研究実績を有する甲南大学・町田 信也教授と共同研究を開始しました。

今回の共同研究を通して、安全性の高さから「ポストリチウムイオン電池」と言われる全固体電池の実用化に向けて検討を進め、電池の進化と脱炭素社会の実現に貢献します。

■共同研究を開始した背景

<全固体電池とは>

持続可能な社会の実現に向けて、脱炭素領域に多くの注目が集まっています。脱炭素を実現するための手段のひとつに「社会の電動化」があり、電動化の鍵として期待されているのが「リチウムイオン電池」です。リチウムイオン電池は、他の二次電池よりも小型かつ長寿命にできることから、EVの普及や再生可能エネルギーの導入拡大において重要な役割を果たすと考えられています。

しかし、リチウムイオン電池にも課題があります。それが「安全性」です。リチウムイオン電池の電解液は有機溶媒なので、何かのきっかけで着火し、電池や機器が燃えてしまう可能性があるのです。特にEVなどに搭載される大型リチウムイオン電池の場合、使用される有機溶媒の量も多くなるため、より危険性が高まります。

上記の理由から、近年、リチウムイオン電池の電解質を液体から固体に置き換えた新たな電池が研究されています。これが「全固体電池」です。全固体電池で使用される固体電解質は不燃性なので、電池としての安全性が高くなると期待されています。

実は日本は、全固体電池の研究開発に力を入れている国のひとつです。2024年5月現在、以下の国家的な研究開発プロジェクトが進行しています。


革新的GX技術創出事業(GteX)
蓄電池領域「高エネルギー密度・高安全な硫化物型全固体電池の開発
(国立研究開発法人 科学技術振興機構)


次世代全固体蓄電池材料の評価・基盤技術開発
(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)

<全固体電池の課題>

しかし、全固体電池にも課題があります。それが、固体電解質と活物質との「接触」の問題です。

活物質とは、電極内部にありリチウムを格納・放出する無機の固体化合物です。リチウムイオン電池や全固体電池は、電解質と活物質との間でリチウムイオンが受け渡されることで、充放電が進みます。

リチウムイオン電池の電解質は液体(電解液)なので、電解質と活物質とがピッタリと分子レベルで接触し、充放電に必要なリチウムイオンの受け渡しをスムーズに行うことができます。しかし、全固体電池は電解質が固体なので、電解質と活物質とが密に接触しにくくなり、リチウムイオンの受け渡しが難しくなってしまいます。さらに、充放電によって活物質が膨張・収縮するたびに、固体電解質と活物質の接触面が「ゆるみ」、接触面積がどんどん小さくなります。これによって電池反応の抵抗が大きくなり性能が大きく低下するのです。

<GMSで全固体電池の課題を解決する>

全固体電池では、従来のリチウムイオン電池と同様に、電極の導電性を上げるため、電極内部に「導電助剤」と呼ばれる材料を分散させる必要があります。

3DCの導電助剤用GMSは柔軟性があるため、活物質の膨張・収縮に合わせて自身も収縮・膨張できます。つまり、導電助剤用GMSを電極内部に添加することで活物質の膨張・収縮を吸収し、固体電解質と活物質の接触面のゆるみを抑え、全固体電池の性能低下を予防できる可能性があるのです。

3DCは今回、導電助剤用GMSにより全固体電池の実用化に貢献するため、全固体電池の権威である甲南大学・町田 信也教授と共同研究を開始しました。

■共同研究先:甲南大学 町田 信也 教授について

町田教授

甲南大学 理工学部 機能分子化学科 教授

大阪府立大学大学院 工学研究科 博士課程を中途退学後、大阪府立大学 工学部 助手を経て、1991年に甲南大学 理学部の講師に就任、1998年から同助教授。2001年には甲南大学 理工学部 助教授に着任し、2005年より現職。

固体中のイオンの移動現象に興味を持ち研究を続けている。新規な固体電解質の開発や全固体リチウムイオン電池の研究に従事している。幅広い種類の硫黄系電解質の研究実績をもち、世界的な全固体電池関連企業と長年にわたる共同研究実績を有する。2024年5月現在、全固体電池に関する国家プロジェクト「革新的GX技術創出事業(GteX) 蓄電池領域『高エネルギー密度・高安全な硫化物型全固体電池の開発』」の中心メンバーとしても活躍している。

研究室HP:http://www.chem.konan-u.ac.jp/SSIC/menber.html

■共同研究の内容

全固体電池の実用化に向けて、以下の2つの視点から共同研究を実施する予定です。

合金系負極の膨張収縮による影響を抑制

全固体電池の場合は電解質が固体なので、上記のように、活物質の膨張・収縮によって固体電解質と電極の接触面がゆるみやすくなってしまいます。

近年、内部により多くのリチウムイオンを格納できる「合金系材料」を活物質とすることで、電池を高容量化する(1回の充電で貯められる電気の量を増やす)研究が進んでいます。しかし、このような合金系材料は膨張・収縮による体積変化が大きいため、全固体電池の活物質として用いた場合、固体電解質と電極の接触面がよりゆるみやすくなることが分かっています。

今回は、3DCの導電助剤用GMSを全固体電池の電極内に分散させることで、その柔軟性によって合金系活物質の膨張・収縮を吸収し、固体電解質-活物質間のゆるみを抑制することを目指します。これにより、全固体電池の劣化抑制に貢献します。

②正極での導電助剤酸化による劣化要因の解明

全固体電池の正極内に配置した導電助剤は、酸化により劣化しやすいことが知られています。今回は、酸化に強い導電助剤用GMSを正極内に添加し、その時の充放電挙動を観察することで、正極における導電助剤の劣化要因の解明を目指します。

===

プレスリリース全文は以下からご覧ください。